塩野 七生『ローマ人の物語〈15〉ローマ世界の終焉』を読んでいる。
第1巻を図書館で何気なく手に取ったのは、確かまだ12巻が出たばかりの頃だったと思う。もともと歴史物が好きだったのですぐにのめりこんだ。
王制、共和制、帝政を経て成長し続けるローマ帝国。そしてその帝国を維持する困難さ。人間を深く掘り下げる事はあまりないが、事実を示す事でその人物像がありありと脳裏に浮かんでくる。膨大な資料の提示のおかげで、まるでほんの100年前の出来事のように想像を働かせる事ができるのだ。
そして今回、昨年末に発売された15巻でこのシリーズは完結。
目次を見る限りでは、東西ローマ帝国への分裂と西ローマ帝国の滅亡を扱っているようである。
まだ半分も読んでいないのだが、ローマ帝国(特に西)の衰退には目を覆いたくなる。
しかしこれは小説ではない。
「最後はハッピーエンド」というどんでん返しは期待できない。
「せめて美しく終わる」という事もない。
ただ事実は事実として記されるのみ。
西ローマ帝国は滅びる。それは曲げようもない歴史の事実である。
にも関わらず、私のページをめくる手は止まらない。止まるどころかむしろ加速する。(速読はできないので、速度に限界はあるが)
それは歴史の重みとでも言うのだろうか、はるか昔の事とは言え本を通じてその歴史に立ち会っているという思いからだろうか。
この思いを以前もした事があるな、と思い返してみると2004年のNHK大河ドラマ「新選組!」がそうだった。
新選組が絶頂を迎えていたものの「ここから後は落ちていくだけだよな……」と思ったのが晩夏。そこからはとにかく衰退する一方である。
しかし人々はたくましく生きている。後世からみれば衰退していく一方だが、当事者はそんな事は思っていない。何とか挽回しようと、生きようと努力していた。
それまえ新選組の事を良く知らなかった事もあって、引きつけられるように見ていたことを思い出す。
※ ちなみに翌年の大河ドラマ「義経」はいくつかの小説を読んだ事があるためか、これほど感慨深くは思わなかった。
本という手段を通じてではあるが、時代の目撃者になる事ができる事に感謝。きっかけを与えてくれた作者と出版社・テレビ局にも感謝である。
私が感情過多なのかもしれないが、歴史は実に感慨深い。
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