Web屋だけど「ウェブの憲法」って聞いた事ない

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 どこにあるのか誰か教えて。

 ちょっとした知り合いであるkazu氏が「ネットの憲法っていつ決まったの?|タダのブログ:kazu氏(ex.なかのひと)の裏ページ」という記事を書いていたので、元記事である「J-CASTニュースからリンクが消えた - 池田信夫 blog」も読んでみた。

 池田氏の当該記事によると、

  • 池田氏のBlogに書かれている内容をJ-CASTニュースが引用した
  • しかしBlogの当該記事へのリンクはなかった
  • けしからん!

という事らしい。
 文章が短くていまいち読み取れなかったので、J-CASTニュースの当該記事も見てみた。
 当該部分だけ抜粋すると、

さらに、「大麻汚染」を巡っては、アルファブロガーとして知られる経済学者の池田信夫さんも異を唱えた。11月16日のブログ日記では、同じ主張に加え、5兆6000億円とも推定されるタバコの社会的コストを指摘。「大麻とは比較にならない」として、「大麻で逮捕するのはナンセンス」とまで言い切っている。このエントリーは、ネット上で注目を集め、300以上ものはてなブックマークが付いている。

 うん、適切な引用である。
 ちなみに引用についてWikipediaでは「日本では、一定の条件を満たした「引用」は、権利者に無許可で行えることが著作権法第32条で規定されている。これは著作権の侵害にならない。」となっている。
 根拠となる法の条文については「引用 - Wikipedia」を参照の事。

 まず前提として、J-CASTニュースの記事は「引用」の条件を満たしているので問題ない。
 問題ない、のだが、池田氏はこう指摘している。

外部リンクを張らないのは、そっちへ飛んだ読者が戻ってこないことを恐れているのだろう。しかしハイパーリンクは、ウェブの憲法である。他人の情報を利用したら、著作権なんて了見の狭いことをいわない代わり、互いにリンクを張って分散データベースをつくるのが HTTPのルールだ。

 では「法律の問題ではなく"ウェブの憲法"の問題だ」という趣旨だと理解して検証してみる。

 とはいえ、そもそも「ウェブの憲法」とは何なのか。
 そもそもそれは存在するのか。存在するならどこにあるのか。

 Google先生に「ウェブの憲法」「webの憲法」「ウェブ 憲法」「web 憲法」あたりで聞いてみたが、それらしいものは発見できなかった。
 とすると、そもそもそんなものはないのか?

 想像力を働かせて考えてみる。もしかして「ネチケット」と呼ばれる「ネット上で守るべきとされるマナー」の事を言っているのかもしれない。

 「ネチケット - Wikipedia」を見てみたが、どうもなさそうだ。まぁWikipediaが万能という訳でもない(間違いもよくあるし)ので、だからと言って完全に否定するのも何だろう。
 とはいえ、「検証できない事を論拠とする」事は説得力を著しく欠く事だけは確かだ。

他人の情報を利用して利潤を上げているくせにリンクも張らないのはマナー違反であり、読者にも不便だ。

 結局のところ、これが言いたい事だと思われる。単純にこの主張だけ見れば、至極もっともだ。リンクがあれば即座に原文にあたる事ができ、非常に利便性が高い。
 だがしかし、自分が「そうあるべき」と思っている事を、「ウェブの憲法」という存在しないものをでっちあげて説明するのは読者に謝った知識を与えるのでやめるべきである。読者にとって「不便」どころの騒ぎではなく、J-CASTニュースを責める以前の問題だ。

今後は、 J-CASTが当ブログの記事をリンクなしで引用するのはお断りする。

 そうは言っても「引用」は法で保証されている行為なので、この言葉は「お願い」以上の意味は持たないのだが。

 昨日の「揚げ足取りなのは分かってる -大麻で大学生が逮捕された件について」でも指摘したのだが、池田氏は言いたい事を適切に説明するだけの文章力をもう少し磨いた方が良いと思う。
 対面であれば「分かっていなそうだな」とか「誤解されてるようだ」というのは表情や態度、その後の会話の内容で補足する事も可能だが、Webはそこがとても難しいメディアなのだ。WebにはWebに適した書き方というものがあると思う。

 ちなみにkazu氏の

あちこちで勝手ルールが出来てそれが当然、という顔をされるとうんざりする

という意見には大いに賛成。
 この事についてはkazu氏の「ネットの勝手ルールが広がってて、ちと面倒い|タダのブログ:kazu氏(ex.なかのひと)の裏ページ」というエントリーも参考になる。


※ ちなみに昨日の「揚げ足取りなのは分かってる -大麻で大学生が逮捕された件について」は池田氏の当該エントリーへトラックバックしたのだが、残念ながら承認されなかったようである。
 氏のBlogに書かれた

・30日以上前の記事に対するトラックバックは受け付けておりません ・このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け付けておりません
はクリアしていたはずなのだが。

 「互いにリンクを張って分散データベースをつくるのが HTTPのルールだ」「読者にも不便だ」と言うのであれば、全くの無関係(spam)でない限り全てのリンク・トラックバックを受け入れる事が「ウェブの憲法」にかなっているのではなかろうか。

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